次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
次の国王がフレッドでなくディルとなれば、政敵であるザワン家の力を大幅に削ぐことができる。また優秀なフレッドより、ディルの方が意のままになる可能性が高い。ロベルト公爵の動機について、ディルはそう説明した。
「実行力のほうは、説明するまでもないな」
プリシラはうなずいた。実家の栄華は誰よりもよく知っている。そして、娘を溺愛する優しい父親の顔は、彼の一面でしかないことも‥‥。政治家としての彼は野心家で、必要とあれは非情な決断も厭わないだろう。
「やっぱりお父様が‥‥あのね、ディル。実はーー」
プリシラは薬草園で聞いてしまった話をディルに伝えた。
「ナイードか。たしかに突然あらわれて、ロベルト公爵の側近の地位を得たように言われてるな。ターナに頼んで、彼のことは少し調べてみよう」
すっかり思いつめた顔をしているプリシラを見ながら、ディルは続けた。
「ただ‥‥俺は正直、いまの話を聞いてもあまりピンときてないんだよな。別にお前をかばうつもりじゃなく、率直な感想として」
「そう?どうして?」
ディルは少し考えてから、話し出す。
「まず、フレッドが王になっても王妃の父親として一定の影響力は保持できる。子が生まれれば、王太子の祖父だしな」
「けど、国王の祖父であるザワン家より発言力は弱くなってしまうわ」
「フレッドが無能ならそうだろうが、あいつはザワン公爵の言いなりにはならないだろう。有力者の権力バランスはうまくコントロールすると思う。フレッドの得意分野だ」
「たしかに。フレッドなら双方をたてつつも、弱まってきている国王の実権を取り戻す。そのくらいはやってのけるわよね」
「それに、ザワン家というライバルの存在は悪いことばかりじゃない。ロベルト家の一強になってしまえば、他家からの妬みや憎しみを全て引き受けることになる。ロベルト公爵はそのあたりのバランス感覚に優れた人物だと思うが‥‥」
プリシラは考えこんでしまった。ディルの言うことはもっともな気がする。けれど、それは父親を信じたい気持ちからくるものかもしれない。
「実行力のほうは、説明するまでもないな」
プリシラはうなずいた。実家の栄華は誰よりもよく知っている。そして、娘を溺愛する優しい父親の顔は、彼の一面でしかないことも‥‥。政治家としての彼は野心家で、必要とあれは非情な決断も厭わないだろう。
「やっぱりお父様が‥‥あのね、ディル。実はーー」
プリシラは薬草園で聞いてしまった話をディルに伝えた。
「ナイードか。たしかに突然あらわれて、ロベルト公爵の側近の地位を得たように言われてるな。ターナに頼んで、彼のことは少し調べてみよう」
すっかり思いつめた顔をしているプリシラを見ながら、ディルは続けた。
「ただ‥‥俺は正直、いまの話を聞いてもあまりピンときてないんだよな。別にお前をかばうつもりじゃなく、率直な感想として」
「そう?どうして?」
ディルは少し考えてから、話し出す。
「まず、フレッドが王になっても王妃の父親として一定の影響力は保持できる。子が生まれれば、王太子の祖父だしな」
「けど、国王の祖父であるザワン家より発言力は弱くなってしまうわ」
「フレッドが無能ならそうだろうが、あいつはザワン公爵の言いなりにはならないだろう。有力者の権力バランスはうまくコントロールすると思う。フレッドの得意分野だ」
「たしかに。フレッドなら双方をたてつつも、弱まってきている国王の実権を取り戻す。そのくらいはやってのけるわよね」
「それに、ザワン家というライバルの存在は悪いことばかりじゃない。ロベルト家の一強になってしまえば、他家からの妬みや憎しみを全て引き受けることになる。ロベルト公爵はそのあたりのバランス感覚に優れた人物だと思うが‥‥」
プリシラは考えこんでしまった。ディルの言うことはもっともな気がする。けれど、それは父親を信じたい気持ちからくるものかもしれない。