次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「なんというか‥‥そんな素直な反応をされると、かえってやりづらいな。結婚が決まった頃、人形みたいな顔で俺を拒絶してた女とは別人みたいだ」
ディルは居心地悪そうに視線を逸らしながら言った。遊び人のくせして、意外と照れ屋なのはディルの憎めないところだ。
「ただの義務だからってつき離したのはディルの方でしょ」
人形みたいな顔で取り繕っていたのは、義務だと言い切るディルに合わせただけだ。自分は別にディルを拒絶したつもりはなかった。
「別に責めるつもりはないよ。婚約者が失踪して、いきなり違う男と結婚しろって言われたらどんな女も拒絶するだろう」
プリシラは曖昧にうなずいた。フレッドの失踪がショックだったのは事実だ。ディルとの結婚がすぐには受け入れられなかったことも。けれど、ディルはなにか思い違いをしているような気がする。
「義務と言ったのは、それが一番お前に負担がないように思ったんだよ。好きな男の生死もわからぬまま他の男、しかも弟となんて、義務だと割り切るほかないだろう」
「ちがっ‥‥」
プリシラは思わず席を立って、声を上げてしまった。
好きな男。フレッドのことはもちろん好きだ。婚約者として、尊敬もしていたし信頼もしていた。いまはどんな形でもいいから、生きていて欲しいと願っている。だけど、男女の恋や愛とはまったく違う感情だ。フレッドの方も同じだろう。世間知らずのプリシラにもそれはわかる。だが、ディルはそこを誤解しているような口ぶりだった。
「どうした?急に立ち上がって」
「違う!違うよ。好きなのは、ずっと好きだったのはーー」
あなたなのに。そう言おうとしたが、言葉がつまった。ディルはきっとプリシラがずっとフレッドを好きだったと思っているのだろう。その誤解を解くのは簡単だ。けれど、だからといって‥‥ディルがプリシラを好きになるわけじゃない。
恋人のように愛されることは望まない。夫婦としての信頼関係を得るために努力しよう。そう自分で決めたばかりじゃないか。
ディルは居心地悪そうに視線を逸らしながら言った。遊び人のくせして、意外と照れ屋なのはディルの憎めないところだ。
「ただの義務だからってつき離したのはディルの方でしょ」
人形みたいな顔で取り繕っていたのは、義務だと言い切るディルに合わせただけだ。自分は別にディルを拒絶したつもりはなかった。
「別に責めるつもりはないよ。婚約者が失踪して、いきなり違う男と結婚しろって言われたらどんな女も拒絶するだろう」
プリシラは曖昧にうなずいた。フレッドの失踪がショックだったのは事実だ。ディルとの結婚がすぐには受け入れられなかったことも。けれど、ディルはなにか思い違いをしているような気がする。
「義務と言ったのは、それが一番お前に負担がないように思ったんだよ。好きな男の生死もわからぬまま他の男、しかも弟となんて、義務だと割り切るほかないだろう」
「ちがっ‥‥」
プリシラは思わず席を立って、声を上げてしまった。
好きな男。フレッドのことはもちろん好きだ。婚約者として、尊敬もしていたし信頼もしていた。いまはどんな形でもいいから、生きていて欲しいと願っている。だけど、男女の恋や愛とはまったく違う感情だ。フレッドの方も同じだろう。世間知らずのプリシラにもそれはわかる。だが、ディルはそこを誤解しているような口ぶりだった。
「どうした?急に立ち上がって」
「違う!違うよ。好きなのは、ずっと好きだったのはーー」
あなたなのに。そう言おうとしたが、言葉がつまった。ディルはきっとプリシラがずっとフレッドを好きだったと思っているのだろう。その誤解を解くのは簡単だ。けれど、だからといって‥‥ディルがプリシラを好きになるわけじゃない。
恋人のように愛されることは望まない。夫婦としての信頼関係を得るために努力しよう。そう自分で決めたばかりじゃないか。