能ある鷹は恋を知らない
恋愛パラダイム
ガタン、と壁に押し付けられるように口づけられる。
両手まで壁に縫い付けられてただそれを受け入れることしかできない。

「ん…っは」

部屋に入った途端、今までの冷静さからは信じられないほどの熱い口づけは高島さんの抑えていた欲が垣間見えてそれがまた私の中の熱を煽った。

視界の端に見える、暗闇に浮かび上がる都会の無数の光があまりに幻想的過ぎてこの現実さえも夢のことのように思う。

「あ…っん」

高島さんの手や唇や目で伝えられる熱がそれを現実に引き戻す。
伝染して広がっていく熱がどんどん上昇していく。

「きゃ…っ」

不意に唇が離れると横抱きにされ、暗い部屋の中を高島さんに抱えられながら進んでいく。
ドサリと下ろされたのはキングサイズのベッドの上。

すぐに私の上に覆ってきた高島さんが余裕のない瞳でネクタイを乱暴に外す仕草に背中をゾクゾクとした痺れが走った。

シャツを脱いで適当に落とすと噛みつくようなキスが降ってきた。

「んん…っ」

唇を合わせながら器用な指先が前ボタンを外していく。
肌が外気に触れてひやりとした瞬間、高島さんの熱い手が侵入して体温を上げられた。

「あ…っ」
「…綺麗だ」

外から射し込む淡い光に浮かび上がる肌を高島さんがなぞりながら見つめる。
ゆっくりとした触れ方は身体をより敏感に高めていく。
耳に降り注いだ低い声にびくりと身体を震わせた。

「芹香…」

呟くような囁きに名前を呼ばれて熱に浮かされるように高島さんの目を覗き込む。
背中を駈け上がる劣情は彼をひどく欲してしまうようでたまらなくなる。

こんなにも好きになるなんて。
どうしようもないくらい好きだ。
ただ今はこの腕の中にいたい。
他のことを考えられない。

自然と近づいていく唇が合わさり、深く口づけると胸の内の熱が滲み出るように求め、その激しさに応える。

そこからはお互いの熱を与え合うように、求めるまま肌を重ねた。


< 32 / 65 >

この作品をシェア

pagetop