能ある鷹は恋を知らない
「何してる」
「だって、恥ずかしい…」
「だめだ。きみは俺のものだろう。隠すのは許さない」

そう言って高島さんはシーツを捲る。

「あ、だめ…っ」

隠そうとした手を取られ、そのまま指先に口付けられる。
チュ、という音を立てて軽いキスが両手に降り注ぐ。

だめ、もうこんなの心臓がもたない…っ!

「高島さん…仕事に行けなくなっちゃうから…っ」

必死に懇願するとキスを落としていた目が私に向けられる。
その目にまた熱が孕んだのを感じて思わず手を引っ込めた。

「きみはさっきから俺を煽っているとしか思えない」
「ち、ちが…っほんとに、仕事が…」
「…そういえば結局あの歯科医とは何があった」

ふいに真面目な表情で高島さんが私の顔を除き込む。

そういえば、言ってなかったけど。

「それは…」
「言わないならこのまま仕事には行かせない」

そう言って高島さんは私の両腕を頭上に束ねて片手で押さえてしまう。

「や…っ」
「芹香」

そんな目で見られたらまた流されてしまう。
高島さんの手が身体に伸びるのを見て観念したように言った。

「告白、されました…っ」
「なんて言われたんだ」
「す、好きだって、ほんとに婚約者にならないかって…んっ」

噛みつくような高島さんのキスに思考を奪われる。

「は…それだけか」
「はぁ…っん、キス…され」
「…キス?」

一段と低くなった声にびくりとなるがすでにキスで朦朧としているので何も抵抗できない。
顎を押さえられて正面から高島さんの眼に射ぬかれる。

「これからは指一本触れさせるな」
「…ん、はい…っぁあッ」

顔が近付いてきたかと思うと左耳を甘噛みされ、その刺激に思わず声が漏れる。

「いた…っ高島さん…あっ」
「きみのことになると余裕がなくなる。…誰にも触らせたくない」
「んん…っ」

激しい口づけに息苦しくなる。
でもそれ以上に嫉妬に駆られた高島さんの余裕のない姿が愛しくてたまらない。

「ん…っすき…たかしまさ…っ」
「は、芹香…」

結局朝から二度目の熱に溺れ、陽が昇るまでシーツから出ることはなかった。



-fin-



< 43 / 65 >

この作品をシェア

pagetop