能ある鷹は恋を知らない
「高島さんっ」
「打ち合わせはどうだった」
「問題ない。それより芹香が来たら連絡しろと言ったはずだが」
「いいじゃないか少しくらい」
熊澤さんは無表情に機嫌の悪そうな高島さんを気にすることもなく笑ってコーヒーを飲む。
さすが付き合いが長いだけあってそれくらいでは全く動じない。
高島さんがさらに熊澤さんに言い寄る前に手元のファイルを渡そうと立ち上がった。
「高島さん、これですよね」
「ああ、助かった。今日は少し延びそうだが19時には部屋に戻る。それから食事でもいいか」
「はい、大丈夫です」
「何が食べたいか考えておけ」
「分かりました」
高島さんの表情からは不機嫌さがなくなっていてほっとする。
いつもと同じスーツ姿なのに会社ってだけでよりカッコ良く見えるから不思議だ。
「いや、ほんとお前芹香ちゃんの前だと柔らかい顔するな。その半分でも部下に分けてやればいいのに」
「そういうのは全てお前が担当だろう。そんなところに割く余裕はない」
「ま、近寄りがたいカリスマ的な社長っていうのもそれはそれで大事なんだけど」
熊澤さんは笑いながら飲み干したコーヒーを持って立ち上がった。
「それじゃ芹香ちゃん、またね」
「はい、ありがとうございました」
手のひらをヒラヒラ振って熊澤さんは奥の方へ歩いていった。
「熊澤と何を話していた」
「熊澤さんと話すことなんて高島さんのことだけです。それより、日曜日なのに会社にこんなに人がいるなんてびっくりです」
「ああ、納期に曜日は関係ないからな。特にデザインやシステム開発は少し変更やバグがあると休日返上だ」
「大変ですね」
「本当によくやってくれている」
奥のフロアを歩き回る人達を見ながら高島さんは呟くように言った。
熊澤さんが言った通り、高島さんは仕事には厳しくて無表情で口調も硬いから、きっと部下の人たちには近寄りがたい存在かもしれない。
でも、きっと誰よりも部下の人達の仕事を認めている。
だからみんな高島さんに付いていくんだろう。
こんなすごい人が恋人だなんて。
私も何かできることがあればいいのに。
できること…。
「高島さん、そろそろ帰りますね」
「ああ」
「それじゃあお仕事頑張ってください」
見送ってくれる高島さんに手を振ってゲートを出る。
そのままエレベーターでエントランスまで降り、買い物に出るべく外を目指した。
「打ち合わせはどうだった」
「問題ない。それより芹香が来たら連絡しろと言ったはずだが」
「いいじゃないか少しくらい」
熊澤さんは無表情に機嫌の悪そうな高島さんを気にすることもなく笑ってコーヒーを飲む。
さすが付き合いが長いだけあってそれくらいでは全く動じない。
高島さんがさらに熊澤さんに言い寄る前に手元のファイルを渡そうと立ち上がった。
「高島さん、これですよね」
「ああ、助かった。今日は少し延びそうだが19時には部屋に戻る。それから食事でもいいか」
「はい、大丈夫です」
「何が食べたいか考えておけ」
「分かりました」
高島さんの表情からは不機嫌さがなくなっていてほっとする。
いつもと同じスーツ姿なのに会社ってだけでよりカッコ良く見えるから不思議だ。
「いや、ほんとお前芹香ちゃんの前だと柔らかい顔するな。その半分でも部下に分けてやればいいのに」
「そういうのは全てお前が担当だろう。そんなところに割く余裕はない」
「ま、近寄りがたいカリスマ的な社長っていうのもそれはそれで大事なんだけど」
熊澤さんは笑いながら飲み干したコーヒーを持って立ち上がった。
「それじゃ芹香ちゃん、またね」
「はい、ありがとうございました」
手のひらをヒラヒラ振って熊澤さんは奥の方へ歩いていった。
「熊澤と何を話していた」
「熊澤さんと話すことなんて高島さんのことだけです。それより、日曜日なのに会社にこんなに人がいるなんてびっくりです」
「ああ、納期に曜日は関係ないからな。特にデザインやシステム開発は少し変更やバグがあると休日返上だ」
「大変ですね」
「本当によくやってくれている」
奥のフロアを歩き回る人達を見ながら高島さんは呟くように言った。
熊澤さんが言った通り、高島さんは仕事には厳しくて無表情で口調も硬いから、きっと部下の人たちには近寄りがたい存在かもしれない。
でも、きっと誰よりも部下の人達の仕事を認めている。
だからみんな高島さんに付いていくんだろう。
こんなすごい人が恋人だなんて。
私も何かできることがあればいいのに。
できること…。
「高島さん、そろそろ帰りますね」
「ああ」
「それじゃあお仕事頑張ってください」
見送ってくれる高島さんに手を振ってゲートを出る。
そのままエレベーターでエントランスまで降り、買い物に出るべく外を目指した。