能ある鷹は恋を知らない
「えっ、高島さん!?」

まさかと思うが侵入者の足音はベッドルームに近づいてくる。

「芹香、いるのか」

咄嗟にベッドの中に潜り込み、シーツにくるまった。
その瞬間ベッドルームの扉が開いてスーツ姿の高島さんが現れる。

「あっ、あの、ちょっと今出られなくて…っ」

まだ時間早いのにどうして…!

「芹香…?」
「あ、だめ、今来ないで…っ」

私の言葉なんて全く気にしない高島さんはベッドサイドまできて私の顔を覗き込む。

「せっかく早く仕事を切り上げて来たのに出迎えがそれか?」
「ちが、嬉しいけどそうじゃなくて…っ」
「そのシーツの下が見せられないと?」

こくこくと頷く私に高島さんは「そうか」と言って躊躇いなくシーツを捲ってしまう。

「あ…っ」

無情にも高島さんの眼前に晒される私の姿。
高島さんは一瞬瞳を大きくして驚いたあと、口元に笑みを浮かべた。

その高島さんの眼はいつもベッドの中で見せるのと同じ熱を灯したもので。

「いい格好をしているな」
「こ、これはちが…っんん」

顎に手を伸ばされ引き寄せるように口付けられる。

「違うことはないだろう。俺以外の誰に見せるつもりだ」
「…っ」

離された唇に高島さんの親指がなぞるように触れる。

「見せるわけ…ない…っ」
「良い子だ。じゃあ俺には見せてくれるな」

そう言って高島さんは上着を脱ぎ、ネクタイに手をかけた。
その仕草にぞくっと背中が震える。

高島さんが纏っていたシーツを取り去ると自然に脚が閉じて両手で身体を隠すようにしてしまう。

「芹香」

熱を帯びた高島さんの声にぴくりと身体が反応する。
ベッドに座り込んだまま、誘導されるように両手を開けてやり場のない手でシーツを掴んだ。

身体に注がれる高島さんの視線に体温が上がっていく。

「芹香、綺麗だ」

頬に添えられた手がするっと下に降り、首筋をなぞって鎖骨に触れる。

私が誘惑しようと思っていたのに、いつもペースを持っていかれてしまう。
今日こそ、勇気を出してこんな下着まで着たのに。

キスをねだるように高島さんを上目遣いで見つめた。
私の気持ちを察したように高島さんが優しく口付けてくれる。
その首に腕を回して高島さんをベッドに引っ張り込んだ。

「…っ」

驚いて体勢を崩した高島さんの上に跨がるように座り込む。
予想外の私の行動に驚いた表情の高島さんを見下ろす。
こんな光景は初めてで、大胆な格好も相まって胸の鼓動が早鐘を打っていた。

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