能ある鷹は恋を知らない
昨夜の自分の感情が分析できなくて落ち着かなかった。
「昨日はヘリ乗った?」
だから明らかに怒りを顕にする彼女にあえて話しかける。
「院長には関係ありません」
「そんな冷たいこと言わないでよ鮎沢ちゃん」
「単なる事実です」
「一度でもデートした仲なのに」
「デートじゃありません」
こういう掛け合いが愉快なだけ。
こんなにからかいがいのある女は滅多にいない。
だから気に入っている。
それだけだ。
「昨日のはデート?」
「もうなんなんですか!」
勢い余って振り返った彼女がバランスを崩したのを見て咄嗟に抱き寄せた。
「きゃ…っ」
さすがに一瞬ひやっとした。
腕の中で早鐘を打っている彼女の脈拍が聞こえた。
その身体の体温を確かめるように頭と腰に回した腕に力を込める。
「…すみません、ありがとうございます」
「怪我ない?」
「はい…大丈夫です。あの、離してくださ…」
距離を取ろうとする彼女の動きに抗うように力強く抱きしめた。
やっぱりおかしい。
どうしてこんなに手離しがたい?
ずっと、腕の中に閉じ込めておきたい。
そんな欲求が、確かに俺の中にあった。
「院長、離して…」
「嫌って言ったら?」
彼女が戸惑っているのが気配で分かる。
その時、待合室から聞こえた声に弾かれるように彼女が腕の中から飛び出して行った。
腕の中にまだ残る彼女の体温と感触。
俺は何がしたかったんだ。
自分でも不可解な行動にため息をついて部屋に戻った。
「昨日はヘリ乗った?」
だから明らかに怒りを顕にする彼女にあえて話しかける。
「院長には関係ありません」
「そんな冷たいこと言わないでよ鮎沢ちゃん」
「単なる事実です」
「一度でもデートした仲なのに」
「デートじゃありません」
こういう掛け合いが愉快なだけ。
こんなにからかいがいのある女は滅多にいない。
だから気に入っている。
それだけだ。
「昨日のはデート?」
「もうなんなんですか!」
勢い余って振り返った彼女がバランスを崩したのを見て咄嗟に抱き寄せた。
「きゃ…っ」
さすがに一瞬ひやっとした。
腕の中で早鐘を打っている彼女の脈拍が聞こえた。
その身体の体温を確かめるように頭と腰に回した腕に力を込める。
「…すみません、ありがとうございます」
「怪我ない?」
「はい…大丈夫です。あの、離してくださ…」
距離を取ろうとする彼女の動きに抗うように力強く抱きしめた。
やっぱりおかしい。
どうしてこんなに手離しがたい?
ずっと、腕の中に閉じ込めておきたい。
そんな欲求が、確かに俺の中にあった。
「院長、離して…」
「嫌って言ったら?」
彼女が戸惑っているのが気配で分かる。
その時、待合室から聞こえた声に弾かれるように彼女が腕の中から飛び出して行った。
腕の中にまだ残る彼女の体温と感触。
俺は何がしたかったんだ。
自分でも不可解な行動にため息をついて部屋に戻った。