One of Them〜第一幕〜『下書き』
卒業試験の内容は個々によって違う。
基本の筆記試験は同じだが実技面はその人の得意なものに沿ったものにする。
筆記試験は前日やって皆合格したため今日は順番ずつ実技をすることになる。
先生から説明を受けたサヤはどこか他人事のように聞いていた。
(どうせ皆合格出来るようなものを出してくるんでしょ…)
それから暫く教室で待機命令を出され、呼ばれた者は別室で試験を受けていく。
サヤが机に突っ伏して眠りについていた時、「星月サヤ」と名前を呼ばれ顔を上げる。
「お前は第3実技室に行け」
「………はい」
サヤは面倒そうに立ち上がって教室を出た。
目的の教室についてノックをして入る。
「しつれーします」
「相変わらずだな、星月」
「………どーも」
あぁ、嫌な先生に当たったとサヤは思わず嫌な顔をしてしまう。
相手の先生は待遇ばかり考えていてラメのことを贔屓にしていた人だった。
サヤは早く終わらせようと「課題は?」と聞くと先生はニヤリと笑みを浮かべた。
「お前は魔法使いの血筋だがあんまり得意ではなかったんだったな?大丈夫か?」
あぁ、嫌味か…なんて思いながら「大丈夫です」とサヤは答える。
「じゃあ魔法課題だ。地震を起こせ」
「…………!」
それは土魔法のBランクの魔法課題だった。
サヤはこのアカデーメイアーでは水魔法を学んでいた。しかもEかDランクの基礎魔法だけ。
なのに、水魔法ではなく土魔法の、しかもBランク。
サヤは怒りを抑えきれず先生を睨む。
「どうした?お前は希少な魔法が使える星月一族の生き残りなんだ。出来るだろう?」
魔法使いは大陸で1割いるかどうか。しかもいるとしても水、火、風、土の内の1属性しか扱えないのが原則だ。
サヤは無表情で先生を見据えた。
「出来ないか?じゃあこの試験は…ふごうか「ノーマの力よ、この地に蔓延る土を響かせよ」………!」
ニコニコで不合格の判を押そうとしたがサヤは呪文を唱える。