届くなら、あの日見た空をもう一度。
急にどうしたんだろう?
学校は?
様子って何?
次々と浮かび上がる疑問に対して答えは何一つでてこない。
不意にかなちゃんがこちらに振り向いた。
「どうした?」
声は聞こえなかったけれど口の動きでそう発音したのが分かった。
盗み見てたことが後ろめたくて慌てて電気ケトルのスイッチを入れる。
お湯が沸くのを待つ間にコーヒーサーバーにフィルターをセットして、粉を入れて。
それからしばらく待つとカチッと音を鳴らしてケトルがお湯を沸いたことを知らせる。
セットしたフィルターにお湯を回し淹れると粉がゆっくりと膨らんで芳ばしい香りが立ちのぼった。
久しぶりに鼻腔に広がる香りが。
誰かのために。
何より、自分のために。
コーヒーを淹れているということが。
その事実が。
チリチリと胸を締めつける。