届くなら、あの日見た空をもう一度。

知らなかったけれど、結局はそれを利用して踏みにじるような形になってしまった。

『また来る』

かなちゃんはそう言ってくれた。

でも。

きっと。

きっともう彼は来ないだろう。

棚から新しいカップを出して水を飲んだ。

シンクの横にだしてあるカップを使ってもよかったけれど、並んでいるそれにいまはに触れたくなかった。

水道から直接汲んだ水はとても冷たかった。

本当に冷たいから。

喉を通って。

食道を通って。

胃に落ちていくのがはっきりと分かった。
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