届くなら、あの日見た空をもう一度。
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俺が十一歳になった年。
つまり小学校四年生から五年生に上がるまでの春休みの間にあの人はこの街を出ていった。
その日は寒さが厳しく、冷たい空気が街全体を包んでいたのを覚えている。
俺は学校が休みなのに朝早くから目が覚め、昼過ぎにあの人を見送るまでの時間を持て余していた。
ゲーム機のスイッチを入れては消し。
漫画を何冊も引っ張り出してはパラパラとめくってみたり。
庭に出て所在なく歩いたりもした。