パーフェクト・インパーフェクト


「わー! 人いっぱい!」


開園してから2時間ほど経つパークは、すでに多くの人でごった返していた。


「ぜんぜん変装してないけど大丈夫?」

「意外と帽子だけくらいのほうが気づかれにくいんですっ。それにティーン向け雑誌のファッションモデルなんて知ってる人のほうが少ないですよ」

「そんなことないだろ。いろいろ出てるじゃん」


朝とかお昼の情報番組にたまに出てること、知ってくれているんだ。

SNSでも告知しているもんね。

繋がっているフォトストは基本的に皆川さんが管理しているんだっけ。


「というか、そういう皆川さんだってメチャクチャそのまま……あ、間違えた、と、とし、あき……さん……?」


エントランスに置いてある大きな地球儀の前で、彼はゆっくり足を止めると小さく笑った。


「うん、合ってるよ」


名前を憶えていなくて自信がなかったわけじゃない。

そのせいで、声がしりすぼみになってしまったわけじゃない。


ものすごく、恥ずかしかったんだ。

誰かの名前を呼ぶだけでこんなに緊張したのは、きっとはじめてだ。

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