パーフェクト・インパーフェクト
皆川さんは、
(間違えた)
俊明さんは、どんな人ごみのなかでも、まるで自分の庭みたいに歩いた。
ぜんぜん急がないし、焦らない。
自分の手元にあるパンフレットと、わたしのスマホのパーク公式アプリを見比べながら、次はどうしようかとのんびり優しく聞いてくれる。
いっさいの気を遣わないと決め、意識的にそうしていたわたしは、少々わがままだったかもしれない。
アトラクション乗りたい、
おなかすいた、
キャラクターに会いたい、
気分のままにリクエストし放題。
だけれど彼はそのどれも、どれほど待ち時間が長くとも嫌な顔ひとつしないで並んでくれたし、いっしょになって楽しんでくれた。
しかもこっちが退屈しないおしゃべり付き。
「あっ。ねえこれ、飲んでみたくないですか?」
あまりにも完璧な対応の数々にすっかり懐柔され、いつのまにか心の底から楽しくなっていたわたしは、半日過ぎるころにはもうなにも緊張せず袖をぐいぐい引っぱれるくらいになっていた。
わたしも女子にしては背が低くないほうだけど、それより頭ひとつ分くらい上にある顔がそっと手元を覗きこんでくる。
「ん、なに?」
「これ、ホットホワイトチョコレートらしいんですけど、上に乗ってるビスケットもキャラクターでかわいいんですっ!」
「うん、じゃあそれ買いにいこうか」