パーフェクト・インパーフェクト


迷路のようなパーク内も、俊明さんは地図も見ず、迷わないで歩く。

そういえばここに来るまでもカーナビを使っていなかった。


「あの、けっこう好きなんですか?」

「なにが?」

「ここ……」


しゃべっている途中ではっとした。

いまとても、よけいなことを聞こうとしてしまっている気がする。


「すごい好きかって言われると熱心なファンってわけではないかも。来たことも数回しかないし」


あまり考えるようなそぶりもなく、彼はさらりと答えた。


「杏鈴ちゃんのほうが好きでしょ、絶対」

「でもわたし、いまだにそんなにスタスタ歩けないですよ!」

「あ、ごめん、速かった?」

「そうじゃなくて! ここってけっこう、エリアによっては迷路みたいじゃないですか? なのに迷わず歩けるんだなあ……って、なんとなく思って」


何度来てもアプリの地図なしじゃなかなか歩けないのだけど。

それともわたしが方向音痴なだけなのか。


合点がいったように、あー、と少し上にある頭がうなずいた。

横顔は例のごとくちょっと笑っている。


「俺、地図って一回見たらだいたい頭に入ってるかもしんない」


空間把握能力、という言葉がぽんと浮かんだ。

それに長けているのは男の人に多いと、そういえばどこかで耳にしたことがある。


ああ、この人ってすごく空間を把握していそうだなあ、と妙に納得してしまった。


いつどこにいても上から物事を眺めているような。

自分のことさえ、常に客観的に見ていそうな。


そんな感じがする。

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