パーフェクト・インパーフェクト
「バンドの皆さんとは来たりしないんですか? というか普段プライベートでも遊んだりするんですか?」
「うん、めちゃくちゃ遊ぶよ。ここにももうかなり昔だけど、東京に来てすぐくらいかな、4人で来たことがあるし。人ごみでヒロがやられて、絶叫系で洸介がやられて、俺はその介抱にまわって、アキだけが最後まで楽しそうっていう地獄絵図だったけど」
「なにそれ……すごい想像ついておもしろすぎるんですが……」
東京に来てすぐくらい、ということは、まだ4人とも10代だったときのことかな。
きっといまのわたしと同じくらいの歳の時代。
どんな青春を彼らは送っていたんだろう。
どんなことで笑って、どんなことで悩んで、どんなことを語り合ったんだろう。
「こんなにいろいろまわるのは初めてだから、きょうほんと、新鮮でめちゃくちゃ楽しいよ」
ありがとう、と。
わたしが言わなきゃいけないはずのせりふを、なんとなしに言ってのけるからずるい。
「こちらこそ……なんか、つきあわせるみたいになっちゃって」
「そう? 最初に誘ったのって俺じゃなかった?」
「だってあれはリアがよけいなこと言ったから!」
きっと気を遣わせてしまったんだろうなって、どこかでずっと心苦しかったんだ。
とても優しい人。
たぶん本当は、不倫なんかするような人じゃない。
「そんなことないよ。むしろ俺のほうが乗っからせてもらっただけ」
目をきゅっと細めて笑った顔は、年下の女の子をからかうみたいな、それでいてこっちの気持ちを推し量るような表情だった。