パーフェクト・インパーフェクト


「バンドの皆さんとは来たりしないんですか? というか普段プライベートでも遊んだりするんですか?」

「うん、めちゃくちゃ遊ぶよ。ここにももうかなり昔だけど、東京に来てすぐくらいかな、4人で来たことがあるし。人ごみでヒロがやられて、絶叫系で洸介がやられて、俺はその介抱にまわって、アキだけが最後まで楽しそうっていう地獄絵図だったけど」

「なにそれ……すごい想像ついておもしろすぎるんですが……」


東京に来てすぐくらい、ということは、まだ4人とも10代だったときのことかな。

きっといまのわたしと同じくらいの歳の時代。


どんな青春を彼らは送っていたんだろう。

どんなことで笑って、どんなことで悩んで、どんなことを語り合ったんだろう。


「こんなにいろいろまわるのは初めてだから、きょうほんと、新鮮でめちゃくちゃ楽しいよ」


ありがとう、と。

わたしが言わなきゃいけないはずのせりふを、なんとなしに言ってのけるからずるい。


「こちらこそ……なんか、つきあわせるみたいになっちゃって」

「そう? 最初に誘ったのって俺じゃなかった?」

「だってあれはリアがよけいなこと言ったから!」


きっと気を遣わせてしまったんだろうなって、どこかでずっと心苦しかったんだ。


とても優しい人。

たぶん本当は、不倫なんかするような人じゃない。


「そんなことないよ。むしろ俺のほうが乗っからせてもらっただけ」


目をきゅっと細めて笑った顔は、年下の女の子をからかうみたいな、それでいてこっちの気持ちを推し量るような表情だった。

< 106 / 386 >

この作品をシェア

pagetop