パーフェクト・インパーフェクト


「ほかにもいろいろ、必要そうなものあれば買って帰ろうか」


住宅街近くのコンビニは、夜遅くでもチラホラ人がいる。

念のためキャップを深くかぶり、先を行く彼の袖をぎゅっと掴んだ。

夜の知らない景色ってなんだか異様に心細い。


メイク落としや化粧水などなど入った、ミニチュアで簡易的なトラベルセットを手に取った瞬間、もしや着替えがないのでは、ということに気が付いた。


服は、まあ、きょうのをまた着ればいいとして。

替えのパンツがないのはかなり重大な問題じゃないの?


世の中の女の子って突然のお泊まりのときどうしてるわけ……?


「どうかした?」

「ど……どうかしたのではなく、どうしようかと……」

「ん? なんか困ったことでもあった?」


パンツがありません。

とは、口が裂けても言えません。


「あの、なんというか、着替えが……」

「あ、そうか、俺のやつ着ていいよ」

「え!?」

「やっぱり潔癖症?」


そうではなく、嫌というわけではなく、むしろとてもありがたく、

だけれどもパンツはさすがにそういうわけにもいかないじゃん!


と思ったところで、信じられないものがドーンと目に飛びこんできた。

そう、それはまさにいま、わたしが泣きそうなくらい欲しているもので。


もちろんノーブランドの超絶地味なかわいくない代物だけど、背に腹は代えられない。

なによりとても感動してしまった。
いまどきはコンビニにパンツが売っているのかと。


手を伸ばしかけて、はっとした。

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