パーフェクト・インパーフェクト


「なーに、その顔」


たぶん、かなりブスっとしていたと思う。


まだ成人式仕様のネイルが施された両手に、むぎゅと頬を包みこまれる。

目の前にある整った顔がおもしろそうに笑っている。


なに、笑ってんの。


「その男、さいてー。嫌い。そんなやつのことウッカリ好きになったリアもビミョーにむかつく」

「それは完全にとばっちり」


だって超むかつくよ。

ふるにしても、もうちょっとマシな言い回しはなかったわけ。


「違うんだって、その話がしたいわけじゃなくて」


人の頬をいまだむにむにと弄びながら、少しだけ目を伏せた。


マツエクなんて一本も必要ない、派手で、強気な目元。

はじめて会ったとき、朗らかな声に名前を呼ばれて、この目力にぎゅっと見つめられて、すごくどきどきしたのを思い出した。


本物のモデルさんのオーラというものを、半年だけ先輩のリアから、新人のころはたくさん勉強したんだ。


「そんなふり方しやがったくせに、成人式で再会したら嘘みたいにチヤホヤされてね、ちょーウケた!って話がしたかったの」

「……なに、ウケないんですけど。ほんとに最低じゃん、そいつ」

「ねー、サイテーっしょ! ホントしょうもなくてさ。……でもなんか、ちょっと、いろいろ、冷めた」


なぜか、チリ、と胸が痛む。


「そういえばちょうどそのころスカウトされて、彼を見返したくてモデルやり始めたんだったなあって、変なことも思い出しちゃった」


そう言ってスマホをタップすると、例の最低な彼とのツーショットをわざわざ見せてくれる。


どんな魅力的なやつなのかと思えば、本当に、拍子抜けするほど、ふつうの男の子だった。

やんちゃな笑顔が印象的だ。

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