パーフェクト・インパーフェクト


「当時、芸能界とか、こういうのホント興味なかったんだけどさ! こいつのおかげでいまのわたしがいるんだな~と思うと、おかしいよねえ」

「うん、でも、そういうふうに考えられるのって、リアの長所だよ」


写真のなか、彼の隣にいるリアは、いつも通り、元気いっぱいに笑っていた。


もともとすごく仲の良い友達だったんだって。

だから成人式でもいっしょに飲んで、すごく楽しかったって、カメラの前で見せるそれとは違う顔で、ふにゃりと笑った。


成人式からの帰り道、ふたりきりになったとき、ホントはオレも好きだった、なんて言われたらしいけど。

それは嘘だと思う、と複雑な顔をした女の子の気持ちを、わたしはもしかしたら本当には理解してあげられていないのかもしれない。


だって、泣いたんだ。


結局そのあとで、ふたりきりで、リアの家にあるたくさんのストックのお酒を空けている途中に。

彼女は、ぽろぽろと泣いた。


これまでに見たことのあるどんな泣き顔とも違っている、いたいけな少女のような涙が、真っ白の頬を伝って落ちていく。


「アンちゃん……わたし、純粋な日本人に生まれたかったって、たまに思うよ」


きっとわたしには想像もできないような、しんどいこと、悲しいことが、出生のせいで、少なからずあったと思う。


リアはいつもぜんぜん弱音を吐かないし、悲しいニュースも話さないし、怒ったり、嫌な顔をしたり、ネガティブな感情を表に出さないけど。

だからこそ、いつも笑って、ジョークばかりしゃべっているその裏側で、ひとりで抱えこんできたものだって、たくさんあるんじゃないのかな。

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