パーフェクト・インパーフェクト
「リアが男の子とっかえひっかえし始めたのって、もしかしてその彼が原因なの?」
「ふふ。どうかなあ」
すでにまどろみのなかにいるのか、むにゃむにゃと犬のように口を動かす。
大きな目はもう半分くらいしか開いていない。
「でももしそうだったら超ダサくない? わたし……」
ソファの上の高級そうなブランケットを手に取り、テーブルにすべての体重を預けている華奢な肩に、そっと乗せた。
「でも、いまだに想像するよ。わたしがふつうの日本人だったら、あのとき彼とハッピーエンドになってて、モデルはやってなかったのかなって。ふつうに、ふつうの人と、ふつうの恋愛をくり返して、ふつうに結婚したりして。……不思議だよね、人生は」
未練があるとか、ないとか、
きっと、そういうことじゃなくて。
その最低な彼は、たぶん最高に、リアの人生において、とても大きな存在なんだ。
「うん、そうだね。……おやすみ」
わたしは、本当にその男のことは嫌いだと思ってしまったけど。
でも、結果的にリアをモデルの道に導いてくれたことだけは、ありがとう。
彼のおかげで、こんなにも頼りがいのある先輩に、負けたくないと思えるライバルに、大好きな友達に、出会うことができたんだもん。
「ほんと、人生って不思議だあ……」
言いながら大きなあくびをして、リアの膝の上に頭を乗せた。
体を小さく丸める。
起きたらふたりともぜったい体が激痛だと思いながらも、ベッドへ移動する気にはならなかった。
こうやってバカなことばかりをしながら、真剣にお仕事をして、たまにいっしょに泣いたり、怒ったりもしたいねって、現実と夢のちょうど真ん中で、願わずにはいられなかった。
モデルのお仕事が大好き。
それはいつも隣にリアがいてくれるから、たぶん、それ以上の意味を持って、楽しいんだよ。