パーフェクト・インパーフェクト
「なに食べよっか」
この微笑みは、ここにあるどんなケーキよりも糖度が高い。
毎日こんなものを見ていたらすぐにでも死んでしまう気がする。
だから、いっしょに暮らす妄想は、きっと100年くらい経たないと、現実にならないな。
「杏鈴ちゃん、パイとアーモンドは嫌いじゃないかな?」
突然なにか思いついたように季沙さんが言った。
「あのね、ガレットデロワが1月限定なの! シンプルだけどどんな飲み物とも合ってすごくおいしいよ」
1月のフランスで伝統的に食べられているお菓子だということ、すっかりパティシエの顔をした季沙さんが教えてくれた。
じゃあそれにします、と即答したら、俊明さんが「俺も」と笑った。
背伸びして、彼とおそろいのホットコーヒーを頼もうか悩んだけど、やっぱりストレートティーで。
せっかくのスイーツ、万全な状態で、おいしく食べたいので!
ガレットデロワ、なるお菓子は本当においしかった。
決して派手な味付けじゃないけれど。
アーモンドとバターの風味が優しくて、甘すぎなくて、いくらでもいけちゃう。
季沙さんいわく、フルーツのフレーバーを入れているから、さらにさっぱりとした味わいに仕上がっているんだって。
甘いものが得意じゃないはずの俊明さんもすぐにぺろっと平らげていた。
「こんなのが毎日食べられるなんて瀬名さんがうらやましいなあ。あ、でもパティシエさんって、家ではお菓子作ったりしないのかな」
「季沙はけっこう作ってると思うよ」
きれいな形の指が、カップをソーサーに静かに置く。