パーフェクト・インパーフェクト


「そもそも季沙がお菓子作り始めたのって、洸介が無類の甘党だかららしいし」

「え! そうなんですか?」

「ほんと、相思相愛でなによりっていつも思うよ」


口元に手を当ててくつくつ笑うけど、それはバカにしているんじゃなくて、ふたりのことを本当に大切に見守っているんだって、ちゃんと伝わってきた。


バンドと、それに関わるすべての人たちが、彼にとってとても大切な存在なんだ。

もしかしたら家族のことを聞いてしまったあとだから、そんなふうに感じてしまうのかもしれないけど。


「好きな人の好きなものを職業にできるって、ほんとに素敵。ほんとに、ほんとに、素敵な夫婦だなあ。あこがれちゃう」


そういえばアキさんも結婚していると聞いた。

あんなにキラキラした、超モテそうな男性が早々に結婚を決意したお相手、すごく気になる。

あとは噂の、弟さんの『かわいー彼女』さんだという、“あおいさん”のことも……。


「そろそろ出ようか」

「うあ、はいっ」

「最後に挨拶しておかなくていい?」

「あ、会ってくる!」


じゃあ会計済ませておくよ、と、当たり前に伝票をさらっていってしまう。


本当にお財布を出させてくれない。

もし子どもだと思ってそうされているのだとしたら、それは、ちょっとだけ嫌だな。

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