パーフェクト・インパーフェクト
「雪夜、でも……わたしたちは」
「おれは好きでおまえの親戚に生まれたわけじゃねーから」
子どものころから何回も、何回も、何回も、しつこいくらいに言われてきたそのせりふ。
わたしは嫌われているから、そういうことを言われるんだって思っていたけど。
たぶん、そうじゃなかった。
そうじゃなかったんだ。
「勝手に、よそで男作ってんなよ」
心がぐちゃぐちゃにかき乱れている。
ちゅう、と鎖骨のあたりを吸われて、赤い痕をつけられながら、わたしはただずっと泣いた。
「……雪夜ってほんとにむかつく……」
「おれのほうがむかついてんだよ、もうずっと昔から」
最後にもういちど言うと、泣いているわたしを残したまま、雪夜は部屋を出ていった。
直後、大好きな恋人から着信があった。
だけどどうしても出ることができなくて。
うなじと、鎖骨と。
ふたつの赤い痕に何度も触れながら、湯船のなかで泣いた。
くちびるをたくさん洗った。
彼に、ぎゅっとしてほしい。
大丈夫だよって笑ってほしい。
だけど、この鎖骨の鬱血が消えるまで、わたしは彼に、きっと会えない。
わたし、悲しい顔をした雪夜のこと、抱きしめてあげたいって思ったんだ。
それは愛情でも、優しさでもなかったけれど。
だけど、たしかに、そう思ってしまったの。