パーフェクト・インパーフェクト
でも、もう忘れたって。
過去のことだって。
きっぱりと、そう言っていたよね。
そうだよ。
というか、過去の女がなんだっていうわけ。
それにこんなのは全部わたしの妄想だ。
えみりが元カノだって、まだ決まったわけでもない。
そうだ、
そういえば、妹さんがいると言っていた。
えみりは妹かもしれない。
苗字が違っているのには、なにか理由があるのかもしれない。
なんか、俊明さんって、わけありっぽいし。
それに、わたしの女の勘は当たらないの。
なにを隠そう、彼が妻子持ちの不倫男だという、最低すぎる勘違いをしてしまった前科がある。
「写真……」
言い訳みたいな妄想、もうなにが妄想なのかもわからないけど、えみりが妹だという勝手な妄想は、いっしょに入っていた写真を目にしたらわずかに確信が持てた。
それは、間違いなく、家族写真だった。
お父さんがいて、お母さんがいる。
そして、小学生くらいの男の子と、女の子がいる。
全員かしこまった服を着て、かしこまった顔で、かしこまった家の前で、かしこまったポーズをしている。
男の子は彼だとすぐにわかった。
いまよりぜんぜん幼いのに、すごく気難しい顔を浮かべている。
その表情はお父さんだと思われる人と本当にそっくりで、なんだか少しだけ、切ないような気持ちになってしまった。