パーフェクト・インパーフェクト
させてほしい、
と頼まれるので、時折リアにフルメイクしてもらうことがある。
お互いの家で遊んだときとか、撮影後にだらだらしゃべっているときとか。
リアは間違いなく、“メイクさん”にも引けをとらない腕前だよ。
センスもいいし、きっとすごく勉強もしていると思う。
ほんとにメイクが好きなんだろうな、といつも思う。
中学生のとき、ある日突然“ブス”じゃなくなったあの感動を、リアにメイクしてもらうたびに思い出すことができるくらいに。
リアはきっと超一流のアーティストになれる。
その手できっと、たくさんの女の子を幸せにできる。
だけど――カメラの前で笑うリアも、いま、とてもたくさんの女の子を、幸せにしているじゃん。
「ぶっちゃけね、もともとモデルとか興味なかったんだよ。好きな男の子に最低のふられ方して傷心してたところにちょうどよくスカウトされて、見返してやろうって気持ちで始めたんだってのは、こないだ話したよね」
覚えている。忘れない。
ガイジンは無理、などと言いやがったらしい、あのやんちゃ男。
思い出したらむかむかしてきた。
たぶんけっこう機嫌の悪い顔になってしまっていたんだと思う。
リアが笑って「その話はいまはいいの」となだめるように言った。
「モデルはいい経験にもなると思ったんだ。“する側”になる前に“される側”をやっておいたら、それってものすごい強みになるんじゃないかって。実際、やってよかったなあって心から思ってる。ほんとに楽しいよ。経験を積むためとか関係なく、ホント楽しんでやってた」
アンちゃんとも出会えたしね、
と、突然お姉さんぶってくる。
焼きあがったレバーは全部リアの取り皿に引き上げられた。
わたしがそれを食べられないこと、ちゃんと知ってくれている。
かわりにわたしのお皿にはハラミがたくさん乗った。