パーフェクト・インパーフェクト



こんな夜に会いたいのが、この男でないことだけは明確だ。


まさにこいつの家と同じ形をした、うちのドアの前。

どうして雪夜がこんなところで待ち伏せしているわけ。


「一生シカトかよ」


いきなり、この上なく不機嫌そうに言った雪夜は、高校の制服を着ていた。

きっと家には帰らないで直接やって来たんだろう。

いったい何時間、ここにいたの。
もう夜の10時だよ。


ぞわりと鎖骨のあたりがうずく。

史上最悪のキスマークは、史上最高のキスマークに上書きしてもらったはずなのに。


「なんなの……なにしに来たわけ」


まさか、謝りに来たわけじゃなかろう。

そんなことされてもなんと言えばいいのかわからないし、困るから、やめてほしい。


だけど雪夜はそうしに来たわけではなさそうだった。


実際、いつも通りものすごく態度が悪い。

間違っても人にゴメンナサイを伝える態度ではない。


「なんで杏鈴がずっと来ないんだって、おかーと海帆がうるせーんだよ。おまえ、あからさまなことしてんじゃねーよ」

「ちあきおばちゃんには、仕事があるからしばらく行けないって言ったはずだけど」

「見え見えなんだよ。おれが喧嘩ふっかけたことにされただろうが」

「実際、雪夜が喧嘩ふっかけてきたんじゃん」

「おれはおまえに好きだって言っただけだ」

「ちょっと、なに開き直って……!」


カッとなりかけて、我に返る。

こんなところで大声出して喧嘩なんかしたらご近所さんに迷惑になるし、そのせいで注目の的にでもなってしまったら、いろいろと面倒だ。

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