パーフェクト・インパーフェクト
「望むなら望むだけ、謝罪はしてやる。正直おれもやりすぎたと思ってる。泣かせたことも、全部おれが悪かった。でも好きだって言ったのは……好きになったのは謝れないし、謝るつもりもない。なかったことになんかできるわけねーだろ、ふざけてんのか?」
「ふざ……そっちがふざけ、」
「こっちは、ガキのころからずっとなんだよ」
決して荒々しくない、落ち着いた声色。
だけど、いつもの5億倍は圧があった。
「浅黒い肌の杏鈴が、クルクルの天パをダッセーおさげにしてた時代から。化粧も流行も知らない時代から。恋愛になんか見向きもしなかった時代から。もう何年も昔から、おれは、おまえを好きだった。女として見てた。たとえ法的には許されるとしても、血の繋がった関係になんか生まれたくなかった。
そうやって積み重ねてきた時間を、いまさらなかったことになんかできるか、ばーか」
近づいたら殴る、って言ったのに。
雪夜はためらいもせず、そっとわたしの髪を引き、くちづけを落とした。
かっと顔が熱くなる。
靴ベラが肌寒い玄関に落ち、からんと、軽すぎる音を立てる。
「やっ……だ、やめて、さわんないでっ」
強くて美しい視線に囚われたら、もう終わりだ。
雪夜もそれを理解しているようで、わたしから1ミリたりとも視線を外さないままぐいと腕を引くと、壁に押しつけた。
人生初の壁ドン、
相手がおまえかよって蹴り上げたいのに、できない。
顎を掴まれる。
人生初の顎クイも、おまえかよ。
雪夜、
いつのまに、こんなに大きくなっていたの。
ぜんぜん逃げられないよ。