パーフェクト・インパーフェクト
「なんで……こういう、乱暴するの?」
わたしのほうがお姉ちゃんだったはずなのに、ふたつ年上の威厳はもうボロボロだ。
「わたしのこと好きなんだったら、どうして優しくしてくれないの? こんなの、ふつう嫌われてるって思うよ。なのになんで雪夜が怒るの? なんでいまさら、引っ掻き回すの……?」
「優しかったら、イコール好きなのかよ?」
「そうだよっ。彼は雪夜と違ってほんとに優しいし……」
「っ、“皆川俊明”はほんとにおまえのこと好きなのか?」
「やめて! 雪夜が勝手に名前呼ばないでっ」
「優しくするなんて、いちばん簡単なんだよ」
そっと、引き寄せられて。
いつもの口調とか、表情とか、態度とか、ぜんぶ嘘みたいに優しく、本当に優しく、抱きしめられた。
そう、まるで――彼にされているみたいに。
「こんなのは誰だってできるんだ」
ちがう。
彼は本当にすごく、優しい人なの。
わたしが会いたいって言えば、いいよって言ってくれるし。
泊まってもいいか聞いて拒否されたことなんか一度もない。
大好きって伝えたら、笑って、うんって答えてくれる。
――これまでに一度も、好きだって言ってもらったことはないけど。
「……やめて……」
いつも、ぜんぶ、わたしから。
会いたいって、帰したくないって、好きだよって、彼から言ってもらったこと、一回もなかった。