パーフェクト・インパーフェクト


「雪夜に言われなくたって、わかってるもん……」


そんな事実、本当はもうとっくに気づいていた。

彼はもしかしたら、わたしのことなんてこれっぽっちも好きじゃないのかもって、頭の片隅では薄々わかっていた。

甘さを感じられる優しさにかこつけて、見ないようにしていただけ。


「……片想いだよ、どうせずっと、わたしの片想いだよ」


だけど、告白したら、つきあおうって、彼から言ってくれたんだ。


朝まで隣で眠ってくれるし、冷蔵庫にはわたしの好きなジュースを用意してくれた。

バレンタインには手作りのパウンドケーキも食べてくれた。

彼の大事な人たちと勝手に会っても怒らなかった。


わたしが泣いていた夜、着替えないで、分厚い眼鏡のままで、車を飛ばして会いに来てくれた。


嫌だったこと、忘れさせてくれた。

キスマークも上書きしてくれた。


ドリア、おいしいって言ってくれた。



でも、彼はきっと、相手がわたしじゃなくても同じことをしていたと思う。


完璧に。
ひとつの隙もなく。

わたし以外の誰かにだって、優しくできる人だと思う。

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