パーフェクト・インパーフェクト
「でも、そうだね。そろそろ始まるし一緒に見よう」
時計にちらりと目をやった彼が、リモコンに手を伸ばしてポチポチとチャンネルを替えた。
「ん! うしろからぎゅっとしててね」
「はいはい」
つい2週間前くらいに収録を終えたトーク番組。
自分が出た番組はちゃんといつもチェックしている。
これは、ナルシストなわけじゃなく、いけちゃんからの業務命令である。
登場してきた自分を見て、ひとまずほっとした。
ちゃんと笑っている。
いつも通り、ちゃんとかわいい上月杏鈴でいられている、と、思う。
実は、リアと焼肉を食べに行って、雪夜と会った夜の翌日に、収録があったのだ。
この日の朝は、泣きはらした目をどうにかするところから始まった。
彼は、髪型がかわいいとか、ワンピースがかわいいとか、ぬかりなく感想をくれた。
もちろんトーク内容についても同じで、だけど決してダメ出しはしてこない。
甘やかされてどうにかなってしまいそうだ。
「でもさ、なんかさ、もっとシャキッ!としゃべりたい。なんでこう頭悪そうに聞こえるんだろ?」
「いいじゃん。とろんとしてて聞きやすいよ」
「えー、とろんってなに」
「かわいいってことだよ」
最後には全部かわいいで済ませるんだからな。
完全に年下の女をなめている。
でも、そう言われて満足してしまうのも本当だから、なめられるのも、しょうがない。