パーフェクト・インパーフェクト
「一途なんだ?」
「……知ってるくせに」
「うん、杏鈴ちゃんを好きな全国の男に、申し訳なくなるときが、たまにある」
男性ファンのことを指して言ったのだろうけど、とっさに雪夜の顔を思い出して、胸のあたりがちくっとした。
さんざんブレザーの肩を濡らしておきながら、わたしはあの日、なにがあっても雪夜のことは選ばない、と最後に宣言したのだ。
それは、親戚だからとか、年下だからとか、性格が合わないからとか、そういうんじゃなくて。
ただ単に、
わたしが国茂雪夜じゃなく、皆川俊明を好きだから。
それ以上の理由なんてないよ。
ついでに、彼がわたしを本当に好きでいてくれているとか、本当は好きでもなんでもないとか、そういうおまけの真相も、必要ない。
「俊明さん」
「うん?」
「あのね……大好きだよ」
俺もだよって、これからも、ずっと、永遠に、言ってもらえないとしても。
きっと“来る者拒まず”な彼が、わたしを恋人として受け入れてくれた現実がここにあるだけで、じゅうぶんだ。
だって、わたしは、彼のもとを去らないから。
だから、胸にうずくもやもやの正体は、暴かないままでいいんだ。
この腕のなかで眠ることができる幸福を手放さないために、本当は、暴かないままでいたいんだ。