パーフェクト・インパーフェクト


頼んでいたアフタヌーンティーセットがそこでやって来た。

アイスのダージリンティーをストローで吸った衣美梨さんは、ひと息おいて、もういちど口を開いた。


「わたしが両親をとても愛していることを、察しのいい彼はよく理解してくれていました。家族を失う痛みをいちばんよく知っている彼だからこそ、わたしにはそうはさせまいとしてくれたんだと思います。

――だからわたしは、ほかの男性と結婚したんです」


それが、“最良の選択”。


本当に、そう思うよ。
彼らしい選択だって。

何度その当時をやり直しても、瀬名さんと飲みに行って泥酔しながら気持ちを吐露することになっても、彼は必ずその選択をするはずだ。


でも、わたしだったら、こう思う。


「最良ってなに?」


彼の気持ちをそこまで汲んで、すべて飲みこみ、いちばん好きな人を選ばなかった衣美梨さんのことを、ある意味で尊敬する。

わたしだったらきっと怒り狂っていた。


最良なんか欲しくないよ。

どれだけ痛くても、怖くても、情けなくても、わたしだったら、いちばん望んでいるものを欲しいと思ってしまう。


「ほんとに、“最良”でしたか?」


衣美梨さんの表情が少しだけ曇った。


「ひとつの後悔もありませんか。ほんとに幸せですか。そういう人生で、よかったですか。ほんとですか」

「……はい。いまとても、穏やかで、幸せです。夫もとても優しくて」

「優しさ選手権だったら皆川俊明だって負けてないでしょ!」

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