パーフェクト・インパーフェクト


鞄から、持ってきていた手紙を取り出し、突き返す。

ついでに万年筆もお返しした。

中身を見てしまったことは最初に謝った。


「こんなに、好きだって、愛してるって、書いてあるじゃん。一生想い続けていくって。どうしてそんなつまんない嘘つくの? そんな気持ちで結婚して、旦那さんにも申し訳ないって思わないの?」


いま、目の前にいる彼女の全身からも、彼をまだ愛していると叫んでいるのが聞こえてくるようだよ。


あの夜、冷静じゃなかった彼もまったく同じだった。

まだ彼女のことをどこかで愛していると、そのすべてが訴えかけていた。


「……あてつけ、みたいなものも、あったかもしれません」


衣美梨さんがほんの少し声を震わせた。


「あのとき、無理やりにでも奪ってほしかった。どこにだって連れ去ってほしかった。どれだけ泣いても、怖くても、なにを失ったとしても、彼といっしょならいいって本気で思ってた。でもそうしてくれなかったから……彼へのあてつけに、夫と結婚しました」


ふたりはまだ愛しあっている。

心のいちばん深い場所で、想いあっている。


完璧に元通りというわけにはいかないかもしれない。


でも、どんなことだって、直そうとして直らないものは、絶対にない。

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