パーフェクト・インパーフェクト


わたしにしかかけられない魔法の呪文があった。

ちゃんと、見つけられてよかった。


「この手紙はお返しします。なかったことにしてください」

「……上月さん、」

「わざわざ剥がしたのをもういっかい糊づけして、ずっと大切に持ってたんですよ。笑えるでしょ?」


最高に女々しいよって、地の底まで幻滅できたらよかったな。


「上月さん、いちど出した手紙は取り消せません。彼とわたしがふたりで幸せになる未来はもうありません。すべて終わったことです」

「終わってないです」


ぐしゃり、
せっかく人が一生懸命に伸ばしたシワをまた簡単につけられた。サイアク。


「いえ、終わったんです。きょうあなたに会ってそれを痛感しました。彼が上月さんを選んで傍にいる理由、わたしにはよくわかります」

「わかったようなこと言わないでください」


彼のこと、自分がいちばんよく知っているみたいな物言いをしないでよ。


昔のことは、とうてい敵わないけど、
でも、いまの彼のことなら、わたしのほうがよく知っている。


あなたになんか負けない。

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