パーフェクト・インパーフェクト
「まだなにも終わってないです。だって始まってもいなかったんでしょう? つきあってすらいなかったんでしょう?」
ただお互いを好きでいるだけのふたりが、どうしてこんなにもすれ違って、苦しまなくちゃいけないの。
ぜんぜん最良なんかじゃない。
こんなのは、最低だ。
たとえ正解だったとしても、彼はいちばん最低の選択をした。
「衣美梨さん、わたしね、彼のことすごく好きなんです」
だけど、大丈夫。
わたしがぜんぶ、最良どころか、最高に変えてあげる。
「だからひとつだけ、衣美梨さんにお願いしてもいいですか?」
突き返した手紙よりも細長い、大きめの封筒を手渡すと、衣美梨さんは戸惑ったように、それでもそっと受けとった。
中身を見た彼女に慌てて返される。
断固拒否する。
「それを使って過去の清算をしてきてください。彼と、ふたりで」
どうか、
どうか、
一度きりの魔法が成功しますように。
この魔法が彼を幸せにしてくれますように。
彼のことはわたしが幸せにしてあげる。
あの夜、そうやって、優しい腕のなかで誓ったんだ。