パーフェクト・インパーフェクト
「よかったら、一緒に来てくれないかな」
そんなふうに、言ってくれるだけで。
わたしをそんなふうに思ってくれているだけで、もう、じゅうぶんすぎるくらいだよ。
「会わせたい人もいるんだ」
「……いい、の?」
「嫌じゃなければ」
会わせたい人って、誰だろう。
彼にとってどんな存在の、彼の人生においてどんな役割を果たした人なんだろう。
なにを思って、そんなこと言ってくれているんだろう。
「正直、そんなのひとりで行けよって話なんだけど」
「ううん」
「情けないなって自分でも思ってる」
「ううん、そんなことないよ」
もういちど、そっと抱き寄せられて。
それからぎゅっと、抱きしめられた。
「ありがとう」
もっとたくさん、たくさん、情けなくていい。
かっこ悪くていい。
大人じゃなくていい。
ひとりで背負えないものがあるなら、わたしが半分持ってあげる。
踏み出せないことがあるなら、わたしが背中を押してあげる。
もし、やり直したいと思うことがあるなら、わたしからそっと、手を放してあげる。
誰かを深く好きになるって、こういう気持ちなんだね。
「……ううん。わたしも、ありがとう」
なにも疑っていないよ。
わたしの片想いだなんて、いまはぜんぜん思わない。
ちゃんと愛情を感じられる。
ああ、愛されてるなあって、体じゅういっぱいに思える。
冷たいやつだと、彼は、自分で言うけれど。
あたたかくて、やさしい、両手にたくさんの愛情を持った人だって、あなたと出会った全員が思っているんだ。
あなたからの優しさを、きっとみんな、必ず一度は受け取ったことがあるはずなんだ。