パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


車で行くよ、と言われたときは本当に驚いた。


東京から、彼の生まれ育った街まで、マップで見てみたら本当に果てしない距離だった。

新幹線を使っても何時間とかかるはずなのに、高速道路だと、いったいどれくらいの時間が必要なのだろう?


「なんとなく、時間かけて、ゆっくり行きたくて」


思わず、本気なの、と聞いてしまったわたしに、そんな返事。

何気ない言葉だったけど、そこに複雑な気持ちがぎゅうぎゅうに詰まっている気がして、うまいこと答えられなかった。



彼がしないので、わたしも宿泊の準備はしなかった。

日帰りのつもりらしい。


けっこうしっかり早朝に出発したから、後部座席で寝ていていいと言われたけど、きちんと目覚めて、メイクをして、助手席に座った。

こんな時間だというのに、さすが、首都高はなかなかに混んでいる。


「朝ごはんなに食べようか」


ハンドルを握った彼がのんきにそんなことを言う。

緊張して、とても朝食のことなんか考えられるような心境ではなかったので、こっちが拍子抜けしてしまった。


「サービスエリア寄るならやっぱり海老名かな」

「海老名って施設すごいって聞いたことある!」

「行ったことない?」

「うん、ないの」


完全に旅行気分。

でも、わたしのほうが辛気くさいのもよくないと思うし、できるだけ楽しむことにした。


それにこれはきっと、前に進むためにする、過去をめぐる旅。

決して悲しい旅行じゃないから。

< 332 / 386 >

この作品をシェア

pagetop