パーフェクト・インパーフェクト
かわりに頭を撫でてやる。
ああ、この子ならきっと、どんな髪型も、髪色も、似合うだろうな。
まじめに黒髪ストレートでいつづけている雪夜の顔の上に、いろんなスタイルを想像してみる。
「けど、アレだよ、やっぱり顔だけ見て近づいてくる女の子とか、ひがんでくる男の子もいっぱいいるだろうから、そういうのにはじゅうぶん気をつけるんだよ。なんかあったらまたわたしがガツンと……」
「いきなりうるせーな、もうガキじゃねーよ」
だって心配なんだよ。
まあ、わたしがガツンと言うまでもなく、雪夜ならひとりでコテンパンにやっつけてしまうだろうけど。
そしてこいつは手加減しないだろうなって思ったら、今度は違う心配がムクムク育ってきてしまった。
そのときふいに、ピロンと、普段あまり鳴らない雪夜のスマホの液晶が光った。
「……えっ。水無月くん!?」
メッセージの送り主は、先のコンテストで準グランプリに輝いた、水無月紗良くんみたいだった。
「おまえ人のケータイふつーに盗み見してんじゃねーよ」
「だって画面こっちむいてたから、つい」
わざわざ覗き見したわけでなく、視界に入ってきたのだ。
「びっくりした。やり取りしてるの?」
「まあ、たまに。あいつメチャクチャ変人だから意味わかんねー画像とか一方的に送りつけてくんだよ」
言いながらトーク画面を開いた雪夜が、ふっと笑った。
本当に、目を疑った。
雪夜がこんなふうにうれしそうに笑っている顔、たぶん冗談じゃなく、本当に、10年ぶりくらいに見た。