パーフェクト・インパーフェクト
ふいに腕がゆるんで、今度は両の頬を手のひらに包みこまれた。
確認するまでもなく、きっと間違いなく、ぐっちゃんぐっちゃんな顔面。
ああ、そんなにまじまじ見ないでほしいよ。
たぶん史上最高にひどいから。
見るにたえないであろうわたしの瞳を覗きこみながら、それでも彼は、ふっと笑った。
「上月杏鈴さん。もしよければ、こんな俺ですが、これからずっと傍にいてくださいませんか」
返事をする前に化粧直しをしたいのだけど、どうやらそれは許してくれなさそうだ。
「……はいっ。このようなふつつかな女ではありますが、喜んで!」
そっとくちびるが重なる。
なんだか、しょっぱい味がする。
くすぐったい気持ちでおでこどうしをくっつけていたら、はあ、と彼が盛大すぎるため息をついた。
「よかった。ほんとに玉砕する気で来たから」
「ふられるのにこんなでかい花束買ってきたの」
「それはまあ、気合を入れるために。それ持ってたら後戻りもできないと思ったし」
「なにそれ、へんなの」
やっぱりどこかかわいい人だ。
優しくて、かっこよくて、スマートで、完全無欠の完璧人間に見えるけど。
最初はわたしも、そういう人だと、信じて疑っていなかったけど。