パーフェクト・インパーフェクト
『いま奥さんから電話がかかってきたんだ。早く帰ってこいって。俺も子どもに会いたいし、そろそろおひらきでどう?』
まあ、そんなところかな。
勝手にアフレコしてみたけどあながち間違っていないでしょう。
どうにも鼻息が荒くなってしまうのを我慢して、精いっぱい息をひそめて観察していると、アキさんが本当にちらりと時計に目を落としたので鳥肌が立った。
なにか答えてうなずいている。
アキさん、ちょっと苦い感じで笑っている。
『あーワリィ、所帯持ちがいんのに時間気にしてなかった』
『いや、ぜんぜん。俺のほうこそ水差すようなこと言ってゴメン』
どんどん生まれる勝手なアフレコ。
わたしって才能あるかもよ。
なんの才能だよ。
「未成年もいることだし、そろそろおひらきにしねえ?」
そしてとうとう内緒話をやめたアキさんが、みんなに聞こえる声で言った。
わたしのアフレコに自然に溶けこむ、ほんとの続きの言葉みたいだった。
未成年という言葉にリアがふくれる。
アンちゃんはもうちょっとでハタチです、なんて勝手なことを言う。
それをアキさんが笑いながらなだめ、またみんなで遊ぼうな、と高校生みたいなせりふで軽く答えた。
みんなで、だって。
とてもさらっと言ったけど、なんとなく予防線めいたものを感じてしまった。