パーフェクト・インパーフェクト


お店を出ると、すぐ目の前で、3台のタクシーがわたしたちを待ってくれていた。

好きに乗って帰ろう、と言った皆川さんが、どうやら事前に呼んでくれたらしい。

こういうところが本当にぬかりなく、いい人。


「あ、わたしリアと乗り合わせます!」


べろべろに酔っぱらった美女を肩に担ぎながらぴんと右手を挙げる。


「この状態でひとりでは帰せないので……。わたしが責任もって送り届けますっ」

「らいじょーぶだよお、うへへ、アンちゃんは心配性でしゅね~」


ろれつの回っていない口が耳元で日本語に似たよくわからない言語をしゃべっている。

気にしない。


ああ、もう。手を腰にまわすな。
くちびるを突き出して甘えてくるな。

帰って男にでも甘えてろ!

リアのばか!


「じゃあふたりは俺が送るよ」


では、
とリアの分まで最後の挨拶をしようとしたところで、それを遮るような声。

くい、と手を引っぱられているみたいな優しい圧力だった。


「もう遅いし、さすがに女の子ふたりだけじゃ心配だから」


皆川さんは、まったく酔ってなどいなさそうな顔で和やかに微笑み、そのやわい声色で平然と言ってのけたのだった。


「あ、マジ? トシがいるなら安心か。オレもさすがにふたりだけで帰せねえなーって思ったんだけど」

「ん、じゃあトシにまかせる」

「そういうことなら、お願いします」


アキさんと瀬名さんと弟さんが順番にしゃべる。
勝手なことを、勝手にしゃべる。


待て。

待て待て、待てい!


わたしのほうはまだイイともワルイとも言っていないのですが!?

そんなにアッサリ了承する!?

この人の信頼度ってそんなに高いの!?

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