パーフェクト・インパーフェクト
アキさんと瀬名さんが同じ車に乗りこみ、それに続くようにして弟さんがひとりで別のに乗りこむのを、結局なんにも言えないまま見送ることになってしまった。
リアは泥酔していてすでに半分夢のなかにいるから、この状況をよくわかっていなさそうだ。
ファッションモデルとバンドマンが
深夜にタクシーで
お酒の香りをさせながら帰宅
……これって、よく考えなくともけっこうまずいんじゃない?
「じゃ、帰ろうか」
例のごとく微笑んだ皆川さんからさりげなく離すようにリアを抱えた。
この人は、こんなふうにまるで王子様みたいに振る舞っているけど、奥さん(仮)と娘ちゃん(仮)を簡単に裏切ってしまえるようなクソミソサイテー不倫野郎なんだから!
リアに手を出されたら非常に迷惑です!
皆川さんが助手席に乗り、リアとわたしとで後部座席に座った。
リアはもうぐでんぐでんで軟体動物みたい。
その様子を視界の端に捕らえたタクシーのおじさんがちょっと嫌そうな顔をする。
「ここだと、どっちの家から行ったほうがいいのかな」
前方から飛んできた質問には即答した。
「リアんチからでお願いします!」
どっちのほうが近いとか、そういう問題じゃないの。
わたしが先に降りちゃって、皆川さんとリアをふたりきりになんて絶対できないよ。
酔っぱらいのかわりに住所を告げる。
ぜんぶ言い終わってから、ウワ家バレじゃん、と気づく。
送ってもらう時点で最終的に必ず家バレしてしまうのだけど。
そんなこともわからないなんて、わたしってやっぱり本当にばか。