パーフェクト・インパーフェクト
半分眠っているリアを車内から引きずり出し、部屋まで送り届けた。
皆川さんはついてこなかった。
食い下がったりしないんだ。
そういう人だってこと、なんとなくわかってきたような気がする。
どこの羽毛なのかと問いたくなるほどいつもふかふかのベッドに家の主を沈め、カーペットの上に投げ捨ててあった毛布をかけてやると、まだアイシャドウで彩られたままのまぶたがちょろりと動いた。
「うふふ、アンちゃんありがと~。そして送りオオカミにはじゅーぶん気をつけてねん……」
むにゃむにゃと口を動かしながらとんでもないことを言い残し、酔っぱらい美女は深い深い眠りについたのだった。
――“送りオオカミ”、って?
もはやよく知っている気がするその言葉の意味を、持っていたスマホでもういちど調べたら、さーっと顔から温度がなくなった。
ばったんがっしゃんと音を立てながら岩佐邸を退散する。
玄関、ぐっちゃんぐっちゃんにしちゃったような気がするけど、それどころではない。
だって、リアが悪いんだ。
寝ぼけてよけいなこと言うから。
送りオオカミなんて。
オオカミって。
皆川さんは、オオカミなの?
いつもこうやって女の子を食べるの?
みんなからの信頼を勝ち取って、なんでもない顔で送り届けて、最終的にはおいしく召し上がってしまうの?