パーフェクト・インパーフェクト
だめだ触られる、
と思い、反射的にぎゅっと目をつむる。
だけどいっこうにどこにもその感触がしないので、おそるおそるまぶたを持ち上げると、あんなに気をつけていたのにおもいきり目が合ってしまって、その瞬間、彼はおかしそうに小さく笑ったのだった。
「お口直し、いらなかった?」
ハッカ味のキャンディ、
さっきのお店のレジ横に置いてあったものだ。
「ひとりだけもらって帰らなかっただろ」
だって、ハッカ味ってあんまり好きじゃなくて。
すーっとして、ベロがひりひりしてくるのが、小さいころから苦手なの。
だけどそんな子どもっぽいことを言うのは嫌で、子どもだって思われるのはどうにも癪で、グーのまま差し出されている手の下に、自分の手のひらをそっと伸ばした。
「あげる」
そう言うのと同時にグーがパーのなかにキャンディを置く。
中身を確認する前にぐっと握らされる。
「気をつけて」
もう家の目の前なんだからなにも気をつけることなんかないよ。
わたしが気をつけるべきはむしろ、あなたなんじゃなかったの?
違うの?
このまま、わたし、ひとりで降りちゃっていいの?
「降りない?」
「え……」
漆黒の目がうかがうように顔を覗きこんできた。
本当に心配してくれているようにも見えるし、
わたしのことを試しているようにも見える。
もう、わからないな。
さっぱりわからない。
この人、なにを考えているのか、本当にまったくわからない。