パーフェクト・インパーフェクト
  ✧︎*。


冬の海って本当に寒い。

寒いというより、もはや痛い。


けれども、人でごった返してるトップシーズンに撮影するわけにもいかないし、そんなことをしていたら、この人たちのCDの発売日をズラさないといけないし。

こんなのぜんぜん余裕。

わたしはプロだから、これくらい、ぜんぜん慣れてる。


「上月さん入りまーす!」


いけちゃんに続いて車を降りると、冷たい潮風が、いきなり髪をぶわっと勢いよく舞い上げた。

中学校の運動部みたいなデカくてあったかいウィンドブレーカーに身を包んでいても、さすがに11月の海ってマジでヤバイの。


「おはようございますっ。よろしくお願いしますっ」


カメラマンさんを始め、スタッフの皆さんにしっかり挨拶してまわる。

なかには何度も撮影でご一緒したこともある顔見知りの方もいる。


「杏鈴ちゃん、久しぶりだねー」

「川上さん、お久しぶりですー。きょうはよろしくお願いします!」

「こちらこそヨロシク。相変わらずかわいいねえ」


リップサービスだとしても、そう言われることはやっぱりうれしいよ。

モデルだもん。
かわいいと言われてナンボの世界。

だから謙遜はしないで、シッカリ笑顔でお礼を言うことにしている。


それに、こういう小さなやりとりが次のお仕事に繋がったりもしているから。

また上月杏鈴といっしょに仕事をしたいと思ってもらいたい。

そのためのすべてに、わたしはいっさいの手を抜かないと決めている。

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