パーフェクト・インパーフェクト
「こら、ユキ。お姉ちゃんにむかってその態度はなぁに?」
「こいつはオネエチャンでもなんでもないので」
「もう、ほんとに誰に似たのかしらねえ……」
ほんとにねえ。
心のなかでちあきおばちゃんに同意して、おもいっきりあっかんべーをしてやった。
ずっとうつむいていたのがこういうときだけふと顔を上げるのは、いったいどういう仕掛けになっているの?
おかげで、夕食が始まってから一度も目が合わなかったやつと、いちばんサイアクなタイミングで視線をぶつけあうことになってしまった。
「マジで杏鈴……おまえ、チョーシこいてんなよ」
調子こいてるってなに?
そっちのほうがふたつ年下のくせに!
と、思っていても言えない時点で、負け戦確定だけど。
だってなにか反論しようもんなら、すーぐ最大攻撃でトドメを刺されちゃう。
なまじっか顔が美しいと、怒った顔の迫力がマンテンで嫌だよ。
顔面だけで人を黙らすことのできる人間が、この世にはいったいどれくらいいるんだろ。