パーフェクト・インパーフェクト



見事なまでになにもしない王様のような長男にかわり、洗い物と片づけを手伝っているあいだに、彼はいそいそと自室へこもってしまった。


聞いてほしい話があると言っているのに完全無視とはどういうこと。

意地の悪さを矯正するには、前世からやり直してきたほうがいいんじゃないの。


「ゆーきーやっ!」

「ウワ、まだいんのかよ? 食ったら帰れって言っただろうが」

「話があるんだってば!」

「おれはない」


ピコピコピコピコ、ゲームばっかりして!

AI相手に闘ってなにがおもしろいの?


同性の友達がいないってさみしい。

雪夜は誰に対しても塩対応どころかレッドホットチリ対応だから、昔から本当に友達が少ないの。

かわいそう。


べつに、本人はそんなもの欲しいとも思っていなさそうだけど。


「じゃあ勝手にしゃべりますー」

「おまえのその最強メンタルはどこで鍛えられてんだ」


それはまあ、だいたいお仕事で。

でも雪夜は答えが欲しいわけじゃないと思うから言わない。


本題に入る前にすーはーと深呼吸する。

つくりものみたいに美しい、透き通ったライトブラウンの瞳が、うっとうしそうにこっちをちらりと見た。


「きもちわりー。なんなんだよ?」

「いま準備中だからちょっと待って」

「『聞け』か『待て』かどっちかにしろばーか」


そうやって雪夜が喧嘩ばっかりふっかけてくるんだからぜんぜん本題に入れないんじゃん!

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