パーフェクト・インパーフェクト
「あのさ、既婚者(仮)のサイテー男をギャフンと言わせるにはどうしたらいいと思う?」
テレビの隣にわざわざくっつけている高性能のスピーカーから、とてもクリアなゲームオーバーのBGMが流れはじめた。
“大戦闘スマッシュボーイズ”ではAI相手に負けなしの雪夜が、めずらしくコテンパンにやられちゃったらしい。
「おまえ……不倫したのか」
だけど雪夜はそんな画面になどおかまいなしだ。
きれいすぎる瞳はわたしからまっすぐ逸らさないまま、さっきからひとつのまばたきさえしようとしない。
「やめてよ、してないよ」
「ハァ? 既婚者がどーのって言っただろうが」
「既婚者、カッコカリ、だもん」
「どっちでもいーわそんなもん」
「よくなーい!」
だってまだ、確定じゃない。
ほぼ確定だと思うけど。
というか、いちばんの問題はそこじゃないのである。
「いいからとりあえず話聞いてってば!」
今度は悪態をつかず、まあものすごーく嫌そうな顔ではあるのだけど、雪夜はわざわざコントローラーを置いてわたしに向かいあった。