パーフェクト・インパーフェクト
「いいか? これは優しいおれからのアドバイスだからな? その案件だけはマジでやめとけ」
「わたしひとりじゃとうてい勝てないのわかってるから、こうやって雪夜の手を借りようと思ってるんじゃん」
「なんっにもわかってねーから。そんなことに貸す手はひとつもねーわ」
わかってるもん。
彼にこれ以上、首を突っこむべきではないということ。
でもね、だって、ほんとにむかついたの。
自分がからかわれたのも、もちろんそうだけど。
もし本当に奥さんと子どもがいるとして、あの人は大切なふたりを簡単に裏切ろうとしているんだよ?
そんなのとても許せない。
だから、彼も、同じくらい傷つかないと割りに合わない。
「やめとけって。特におまえは人前に出る仕事してんだから。バレたら一巻の終わりだぞ?」
そう言われてしまったらなにも反論できない。
雪夜はカーペットに落ちていたコントローラーをおもむろに拾い上げると、黙ってコンティニューボタンを押したのだった。
「まんまと変な男に引っかかってんじゃねーよ」
視線は画面にむけられたまま、あきれたように言う。
「べつに……引っかかってないし」
「それはもう引っかかってるっていうんだよばかかよ」
「引っかかってないしばかじゃないし」