パーフェクト・インパーフェクト


「いいか? これは優しいおれからのアドバイスだからな? その案件だけはマジでやめとけ」

「わたしひとりじゃとうてい勝てないのわかってるから、こうやって雪夜の手を借りようと思ってるんじゃん」

「なんっにもわかってねーから。そんなことに貸す手はひとつもねーわ」


わかってるもん。

彼にこれ以上、首を突っこむべきではないということ。


でもね、だって、ほんとにむかついたの。

自分がからかわれたのも、もちろんそうだけど。


もし本当に奥さんと子どもがいるとして、あの人は大切なふたりを簡単に裏切ろうとしているんだよ?


そんなのとても許せない。

だから、彼も、同じくらい傷つかないと割りに合わない。


「やめとけって。特におまえは人前に出る仕事してんだから。バレたら一巻の終わりだぞ?」


そう言われてしまったらなにも反論できない。

雪夜はカーペットに落ちていたコントローラーをおもむろに拾い上げると、黙ってコンティニューボタンを押したのだった。


「まんまと変な男に引っかかってんじゃねーよ」


視線は画面にむけられたまま、あきれたように言う。


「べつに……引っかかってないし」

「それはもう引っかかってるっていうんだよばかかよ」

「引っかかってないしばかじゃないし」

< 88 / 386 >

この作品をシェア

pagetop