パーフェクト・インパーフェクト
光の速さで動く親指をじっと見つめた。
雪夜はもうなにもしゃべらない。
画面のなかで闘っているふたりのうち、どちらが雪夜の操るキャラクターなのかぜんぜんわからないけど、やがてふたりのうちひとりのエナジーがゼロになり、試合は再び終了した。
「杏鈴が男の話なんかしてくんの、はじめてだろうが」
どうやら今度も雪夜の勝利で終わったらしい。
どうやっても勝ててしまう相手にそろそろ退屈してきたのか、すぐに本体からソフトを取り出すと、別のRPGをセットした。
「勝ち負けとかギャフンと言わすとか、そんなこと考えてる時間があんなら分相応の相手とマシな恋愛をしろよ。はじめっからわざわざいばらの道を行こうとするなばか」
もしかしたら、けっこう本気で心配してくれている?
ガラにもない。
本当にめずらしい。
なんだかんだいっても血の繋がった関係なんだなって、いつもほとんど機嫌の悪そうな色にしかならない横顔を眺めながら、なぜかじーんとしてしまった。
だけど、ごめん、
これは、たとえどんな素晴らしい説得をされたとて簡単に変わるような気持ちじゃないのだ。
引っ掻きまわされるだけでフェードアウト、なんてわたしのなかのなにかが許さない。
そんな“負け”は許されない。
黙りこんでいるわたしにすべてを察したのか、雪夜はRPGのオープニング映像をスキップさせながら、はあと今度は短くため息をついた。