パーフェクト・インパーフェクト
「……まあ、1回デートするくらいはいんじゃね。約束したんだろ」
仕事上、無理に連絡を絶つのも難しいんだろ、と続けて。
「そのかわりぜっっっってーおれに泣き言とか文句言ってくんなよ。こっちはボランティアじゃねーんだからな」
ついでに中指を立ててきたのはへし折ってやった。
もちろん、関節の曲がる方向にしたがって。
「もー。なんだかんだいって最後には助けてくれるのは知ってるって」
「うわウザ」
「持つべきものは有能な親戚だよね! 雪夜の顔に興味すら持てないポジションに生まれてほんとよかったー!」
子どものころみたいに抱きつこうとしたのは俊敏すぎる動きでパッとかわされた。
行き場のない両腕で背中をボコスカ叩く。
なんだかけっこう、広くなっちゃったなあ。
「こっちは好きで杏鈴の“親戚”に生まれたわけじゃねーから」
そんなふうに憎まれ口をたたいても、雪夜が本当はけっきょく冷たく対応しきれないやつだってことならよく知っている。
めんどくせー、うぜー、だりー、
と言いつつ、いつも最後には誰のことも見捨てたりしないコだ。
決して顔だけじゃなく、そういうのが雪夜のモテるいちばんの要因だということも、本当はわかっている。
「そうとなればあの男、ぜったいギャフンと言わせてやる……!!」
「せいぜいギャフンと言わされないようにな」
なんだと。
なにを考えているのかよくわからないあの笑顔を思い出して、全身にみぞみぞと鳥肌が立った。